忍者ブログ
暇人の暇人による暇人の為のブログ。 小説を書くとか書かないとか。
Calendar
<< 2024/05 >>
SMTWTFS
1 234
5678 91011
12131415 161718
19202122 232425
26272829 3031
Recent Entry
Recent Comment
Category
13   12   10   9   8   7   6   5   4   3   2  
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

新年明けましておめでとうございます。
年末年始は宿題で潰れそうです、泣きそうです。
といっても年末は遊び倒しましたが。
これからもよろしくお願いします!

と、いう訳でさっそく第2話です。




 スネークのカフェを出て、2時間が経った。
 相変わらず4番街は人混みと喧騒に包まれていた。時折怒鳴り声とガラスが割れる音が聞こえる。
 ピカチュウはこういう騒がしさが嫌いだった。
 喧嘩や争いには血が伴う。他人が傷つき倒れていく姿を見るのは本当に苦痛なのだ。だからこそスマッシュブラザーズの大乱闘のシステムが、彼にとって青天の霹靂だった。あくまで、スポーツとしての闘い。血を見なくて済む争い。絆が生まれる勝負。ピカチュウはスマッシュブラザーズメンバーに選ばれた事を誇っていた。
 が、それもこれも全部クレイジーハンドのせいで台無しになった。
 あの夜を思い出すだけで思考が真っ赤に染まり、怒りと悔しさで潰れそうになる。
 そして同時に思い出すあの顔。あのお人好しそうな顔に騙されたのだ、自分は。ゼニガメやフシギソウ達だって一緒だ。自分を騙して、嘲笑う、敵。レッドは決して赦さない。
 スネークはああ言ったがどうせレッドがピチューをたぶらかしたに違いない。
 ピカチュウが憶測を繰り返していたのと、相手も必死で雑務をしていたので、互いに気付かず顔をぶつけた。

「わっ……。あ、ごめん……」
「あぁ……。……あっ、ちょっと!」

 ピカチュウが小さく頭を下げ、先を行こうとした。
 だが、呼び止められた。
 正直言ってこんな所で時間を取られるのが嫌だったので、思いっきり不機嫌な声を出してしまった。
 しかしそんな気持ちも振り返った先の顔を見た瞬間、吹き飛んでしまった。

「リュ……リュカ!」
「わ……やっぱりピカチュウなんだねっ。あのピカチュウなんだね!」

 黄色の巻き毛に赤と黄の縞模様の服。防寒用か、見馴れない長袖に橙色のマフラーをしていた。そして大量のポケットティッシュ。
 リュカは何かアルバイトをしているのだろうか。
 だとしてもこんな仕事がまともな給料を貰えるとは思わない。
 彼の仕事とそれに伴う財政状況を考え始めると、身形も目につくようになった。
 ぱっと見は解らないが、薄汚れているし、顔も心無しかやつれているように見える。

「あ……どうしたの? じろじろ見て」
「え? あ、ごめん」

 気付かない内に自分はリュカを凝視していたらしい。彼の表情を見ればどの位見ていたか手に取るように解る。酷く恥ずかしかった。最も、まじまじと貧相な身形を見つめられ、気恥ずかしかったのはリュカの方だろうが。

「ピカチュウ久しぶり。こんな所でどうしたの?」
「うん……ちょっと色々あってね……。」

 ピカチュウがリュカにこれまでの経緯を話す。
 一通り話し終えるとリュカがある事を提案してきた。

「じゃ、じゃあさ、僕も一緒に行って良い?」
「え?」

 思わず訊き返してしまった。
 まさかリュカからこんな提案が来るとは思わなかったのだ。

「こんな所でずっとティッシュ配りなんてうんざりだよ。それにクレイジーの事はぼくだって許せない」
「でも……」
「それにピカチュウと一緒なら、大丈夫だよ」

 何が大丈夫なのか解らない。自分はそれ程頼りになる存在だろうか。いや、ならない。
 自分の街を捨てて命からがら逃げ出してきたし、弟1人面倒見る事が出来ない。どう考えたって頼りにされる訳がない。

「それに人手は多い方がいいでしょ」
「それはまぁ……そうだけど」

 珍しくリュカが強気だ。
 ピカチュウは押しの強いのに負けやすい。

「う。……まぁいいよ」
「うんっ。頑張ろう!」

 だから、結局根負けし、渋々承諾してしまった。
 だが、何か腑に落ちない。ここまでリュカが強気な事が過去にあっただろうか。
 何かを頼む時もいつもネスの後ろに隠れていた内気なリュカがこれ程ものを言えるようになっているのは驚きだ。
 ピカチュウがネスの事を思い出す。
 そう言えば一緒ではないのだろうか。

「リュカ、そう言えばネスは?」
「え? あぁ……」

 そこでリュカの表情が一変した。
 途端に顔は曇り、口を閉ざす。
 ピカチュウのにも何か読めた。恐らく
ネスは……。

「……スマッシュブラザーズ、いや、クレイジーに」
「…………」

 もう言わなくて良い。
 こちらが辛くなる。
 リュカが拳を握りしめ、吐き出すように言った。

「殺されたよ……」
「……っ……」
「僕の目の前でネスは死んだ。クレイジーが追ってきて、追いつめられたんだ。……そこで、ネスが僕の前に立って攻撃を受けた。その時既にテレポートを発動してたから助けようにも……」

 リュカの脳内にあの時の場面が甦る。
 腹を貫通したレーザー、返り血が辺りに飛び散る、当然自分の顔にも。
 テレポートした後にも残るのは、生温かい、ネスの血。

「僕は……」
「もう良いよっ」

 寧ろ、やめてくれ。
 そんな思いがほとんどだった。
 彼が変わったものはネスの死なのだろうか。頼りにする存在が居なくなり、自分1人で生きていかなければならないこの状況がリュカを変えたのだろうか。一応は説明がつく。あくまで憶測に過ぎないが、的外れと言う訳でもないだろう。

「行こうよ、ピカチュウ。9番街へ」

 食糧は20日分とスネークは言っていた。単純計算、1人10日分。この先には6番街もある。 もし尽きたとしても少なからず金もある。何か買えばいい。
 確かに酷い事ばかりだが、足場はまだ安定している。何より、道連れも出来た。

「うん」

 鉛色の空は、延々と雪を降らし、地に着いた雪は泥と混じって水へと姿を変えていった。
 そんな道を、彼らは歩いていった。

 

 

 1番街、そこは貴族ばかりの住まう高級街。かのスマッシュブラザーズの屋敷もここにある。
 高台に聳えるそれは重々しい雰囲気を放ち、さながら悪魔の棲む城をもイメージさせる。
 その屋敷の中枢とも言える場所、クレイジーの自室になる部屋は、まさに悪魔の部屋だった。

「クッ、上等。てめぇがそんな態度取るならこっちもそれ相応の事しなきゃいけねぇよなぁ?」
「……ほざけ、下衆が。……貴様の思い通りにはさせん……」

 その生意気な顔に1発、罰に腹へ1発、おまけにもう1発、殴っておいた。
 しかし相手はなんの反応も示さない。
 それが怒りの火に油を注ぐ。

「……身体へやるよりも……精神に傷入れた方がてめぇには効くか……?」
「なんだと?」

 踵を返し、部屋を出るクレイジー。
 Mr.ゲーム&ウォッチに彼をいたぶる命令を与えておき、クレイジーは階段を下りた。
 その頭は下卑た思想を抱え、口には漏れ出た厭らしさがにやけ顔になって表れていた。

 

拍手

PR

コメント
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
トラックバック
この記事にトラックバックする →
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
リンク
基本的に小説サイトとリンクしてます。 でもリンクフリー。
最新コメント
[11/16 Noel]
[11/16 Ricardo]
[11/16 Rayon]
[11/16 Georgina]
[11/16 Loubna]
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
彗星
性別:
男性
自己紹介:
暇人暇人言ってるけど実際あんまり暇じゃない。
ブログ内検索
カウンター
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine
Powered by [PR]
/ 忍者ブログ